位相制御で発生する高調波電流と高周波ノイズの問題について
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 ヒータなどを負荷とする精密温度制御によく利用される位相制御器は、その電力制御原理から高調波電流とラジオノイズのような高周波ノイズを発生します。
今回は、その発生原因とその弊害、対処方法について説明します。

高調波電流と高周波ノイズについて
 よくこの両者を混同しやすいので、まず、この二つについて概要を簡単に説明します。
(高調波電流とは)
 ヒータ負荷を用いた位相制御での温調システムおよび電流波形を以下に示します。

ヒーターとコントローラー、サイリスタの関係

出力50%時のヒータ電流波形
出力50%時のヒータ電流の波形
 このように位相制御では、ヒータに流す電流を正弦波状ではなく、不連続な電流波形を印加することで電力を調整します。この電流波形は、電源の基本周波数の整数倍の電流波形が合成されたものになるため、電源供給側からみると結果的に高次の電流成分が含まれる電流を供給していることと等価になります。
これは、たとえば50Hzの電源では、100Hz、150Hz、200Hz・・の電流がいつの間にか供給されている状態になり、このような電流があちらこちらに生じると電力設備などに障害(進相コンデンサの焼損など)をもたらすことになります。高調波電流を生じる機器としては、位相制御器の他に、家電、パソコンなどに入っているスイッチング電源、インバータなどがあります。ご存じのように、これらの機器は膨大な台数に上りますので、これらが発生する高調波電流を規制しようという流れは当然強まるわけです。
参考例として、定格1Aのヒータを出力50%でのヒータ電流波形の高調波電流をシミュレーションした結果をスペクトラムに表しました。このように、位相制御では、奇数次の高調波成分が多く発生していることがわかります。

高調波スペクトラム(シミュレーション結果)
高調波スペクトラム(シュミレーション結果)
 (高周波ノイズとは)
 一方、高周波ノイズとは、一般的に電磁波障害をもたらす周波数帯域(150kHz〜1GHz)で問題になるラジオノイズのことをいいます。このノイズは、電源ラインなどを伝わってくる伝導性のノイズと空間に向けて放射される放射性ノイズに大別されます。
一般的にはラジオ、テレビ、無線通信、ネットワーク通信などで、信号以外の不要輻射ノイズで機器が誤動作したり、雑音が入ったりという障害が起こります。
位相制御では、ターンオンする際の電圧、電流の急峻な立ち上がり波形が生じるため、そこに高周波(主に数十KHz〜数十MHzの帯域)のクリックノイズが発生し、制御系に影響を及ぼしたり周辺機器に電波障害を引き起こしたりします。
下図に、ノイズ発生の様子を示します。
ノイズ発生の様子
 また、下図に伝導ノイズのスペクトラム波形を示します。
伝導ノイズのスペクトラム
対策方法について
(高調波電流の対策方法)
 高調波電流を対策する方法としては、次に挙げる方法があります。
  • 電源ラインと位相制御器との間に高調波抑制回路を挿入する。(コストアップ)
  • AC可変電源などを用い電流を正弦波状にする。(コストアップ)
  • 工場内の配電設備に高調波抑制装置を設置する。(工場プラントでは一般的対策)
このように、高調波電流対策を行う場合は、システムの規模により、どの手段を用いるのが効率的かを検討することが重要だといえます。

(高周波ノイズの対策方法)
 高周波ノイズを対策する方法として、次に挙げる方法があります。
  • ノイズフィルタをヒータ用電源ラインに挿入し、伝導性ノイズを減衰させる。(フィルタが大きい)
  • 素子のスイッチングスピードを遅くし、ノイズの発生量自体を減衰させる。
    (ただし、スイッチング損失が増加する。)
  • CRスナバなどのサージアブソーバをスイッチング素子に挿入し、スパイク電圧などを抑制する。
    (効果小)
 高周波ノイズは、特にケーブルなどから放射ノイズが発生することで、近傍の装置に悪影響を及ぼす場合は対策が難しく、周辺機器のノイズ耐量を上げるなどの抜本対策が必要になる場合もあるので注意が必要です。また、ケーブルの配置をしっかり固定しないと再現性が得られないことがありますので注意が必要です。
その他の注意事項等
(高調波電流の適用規格について)
 高調波電流に関する規格、規制は完全に整備されておらず、特に工業環境については未だ規格が認められていないというのが現状です。国内に目を向けると、家電、汎用品に関するガイドライン及び工場プラントでのガイドラインというものが定められています。
また、ヨーロッパ規格に目を向けると、定格電流16A以下の機器については規格が正式に承認されていますが、それ以上の機器に関しては暫定規格のみの状態です。
以下に主な規格の一覧を示します。

○ 国内
・家電汎用品高調波抑制対策ガイドライン
・高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン
○ 海外
・IEC61000−3−2
 一般低電圧配電系統に接続される機器(入力電流16A以下)に対する限度値
・IEC61000−3−4(暫定規格)
 一般低電圧配電系統に接続される機器(入力電流16A超)に対する限度値
・IEC61000−3−6(暫定規格)
 中高圧電力供給システムに接続される機器に関する高調波電流発生の限度値
*暫定規格とは、IEC規格に基づいて制定されるヨーロッパ規格(EN ナンバーで内容はほぼ同様の規格)が正式にECの官報に登録されていないことを意味する。

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