技術解説

無線の基礎知識

1. はじめに
私たちの生活の中で、無線機器は必要不可欠となっています。毎日のように使用するスマートフォンやノートPCは、通信技術の発達によりインターネットに簡単に接続できるようになりました。メールや電話がいつでも使用可能で、公共のWi-Fiや携帯電話回線を使用して気軽に映画や音楽を楽しむことも可能となりました。情報機器だけでなく、イヤホンやスピーカーなどのオーディオ機器や、キーボードやマウスなどの周辺機器も無線が当たり前となり、生活の中からケーブルが徐々に減ってきています。スマートフォンが4Gから5Gに移行していくように、通信技術は日々進化して生活を便利にしてくれます。

近年、無線化の取り組みで勢いがあるのが産業界です。これまで有線で接続していたものを無線化しケーブルを無くすことで、設置の自由度が向上し、フレキシブルでメンテナンス性の高いシステムを構築できます。また保守点検などでこれまで人間が介在していた作業も、無線で定期的にデータ収集や確認が容易となることで不要となり、生産性の向上が大きく期待できます。

無線技術は、私たちの身の回りにあるものから産業界まで幅広い分野で活用され、普段の生活をより便利にしてくれるとともに、産業の生産性を向上し経済発展に貢献しています。本記事では、無線技術の基礎知識である無線通信・電波の歴史と電波の用途、私たちが電波を利用する上で守らなければならないルールについて解説いたします。

2. 無線の歴史
無線通信は電波の発見から始まりました。1864年にイギリスの物理学者であるマクスウェル(1831-1879)が電波の存在を予言し、1888年にドイツの物理学者であるヘルツ(1857-1894)が、実験で電波の存在を確認しました。後にヘルツという名前は周波数の単位(Hz:ヘルツ)として採用されます。その後、1895年にイタリアの発明家であるマルコーニ(1874-1937)によって、世界で初めて電波を使用した無線通信を成功させました。1901年には大西洋を横断する無線通信に成功し、この時の通信距離は約3500kmだったそうです。当時、無線通信はケーブルを敷けない船舶で利用されるなど、大いにメリットがあったため盛んに研究されました。今日の無線機器やラジオ・テレビ放送、業務無線などに利用されています。また電波を使用した技術は通信だけでなく、計測にも利用されています。この内容については次節にて解説いたします。

3. 電波の用途
電波の用途は大きく通信と計測に分けられます。通信分野では、携帯電話やスマートフォンなどの情報端末が一番イメージしやすいと思います。無線技術の発達により、いつでも簡単に電話やインターネットが可能となり、大容量・高速で通信が行えるようになりました。交通系ICカードや忘れ物防止などに使用されるRFタグも、距離は短いですが無線通信で、履歴や管理番号などの情報をやり取りしています。自動車のスマートキーは無線で情報を送り、鍵の開閉を行います。物理的な鍵を使用することも少なくなったと思います。ワイヤレスイヤホンやスピーカーは、音声や音楽を無線通信で送信しています。より高音質でクリアに聞こえるように進化しています。

計測分野では、レーダー(Radar : Radio detecting and ranging )などに代表される電波を利用した測定システムがあります。レーダーは対象物に電波を発射し、その反射した電波を検知し、対象物の距離や方向を測る装置です。船舶や航空機などに搭載され、周囲の機体などの把握に使用されています。また雨や雪の位置などを把握するための気象レーダーも同じ仕組みです。

その他、電波で加熱する電子レンジや、置くだけで充電できるワイヤレス充電器も、電波を利用した機器です。
無線通信や電波を利用した技術は多方面で使用されています。今後も無線機器は更に増えていくと言われ、昔では考えられなかった機器まで無線で利用できるようになると考えられています。

4. 電波利用のルール
混雑した会場や駅などでスマートフォンを使用したとき、通信が遅くイライラした経験があると思います。これは同じ周波数を使用している機器が多く、使用する周波数帯が混雑していることが要因です(Wi-FiやBluetoothは同じ2.4GHz帯を使用)。今後、無線機器は増えていく傾向にあり、全ての機器と利用者が平等に使用できなければなりません。そこで、電波法と呼ばれる電波利用のルールを守る必要があります。電波法を無視して好き勝手に電波を使用してしまうと、普段使用する機器だけでなく警察や消防などの業務無線に影響が出てしまい、私たちの生活の安全を脅かしてしまうこともあります。

私たちが普段使用するスマートフォンなどの無線機器は、“特定小電力無線局”と呼ばれる機器です。無線機器を扱う場合は原則免許が必要となりますが、“特定小電力無線局”に分類される機器は免許不要の機器のため、私たちは電波法を意識せず簡単に使用することができます。使用する無線機器の背景には電波法というルールがあり、公平な利用を目的としていることを、利用者側も理解しておきましょう。

5.おわりに
弊社は計測・制御のサービス企業として、温度調節計や電力調整器、各種センサの製造・販売を行っています。その中でケーブルを使用せず、無線で温度測定が可能な無線温度センサ変換器“NWSシリーズ”を販売しています。測定対象が移動する・回転するなどで、配線することが困難な場所でも測定が容易に行えます。温度センサは汎用の熱電対や測温抵抗体を使用でき、電圧や電流の測定も可能な製品です。興味を持たれましたら、ぜひお問い合わせください。