技術解説

温度の測定方法について

1.はじめに

 温度は私たちの日常生活において切り離す事のできない重要な物理量です。
気温や体温などは、とても身近な温度ですし、その値を知ることによって、出かける服装を調整したり、身体の調子を知ることができます。また、調理などでは、油の温度次第で、天ぷらの出来加減も違ってきます。同じように工業的な分野でも、温度を測定、制御し、一定の状態で物を作る事によって、製品の質を一定に保っています。
このように温度を測定する事は、物を作るうえでは、基本的で、なおかつ重要なことです。近年は特に、精密で繊細な製品が多いことから、温度測定に対しても、より精密な温度測定が求められるようになってきました。

今回は、最もポピュラーな測定方法である接触方式の温度測定について、その特徴と注意点を綴っていきたいと思います。

2.応答について

 接触式温度計による温度測定では、温度センサと測定対象を熱的に十分接触させ、温度センサの温度と測定対象の温度とを一致させる事が大切です。
また、温度センサ自体に熱容量があり、センサの温度が一定になるには(測定対象が一定温度の場合)時間を要することから、温度測定には十分な時間を取ることも重要となってきます。特に気体の測定の場合は、気体の熱の伝わりが悪いため、十分な測定時間と応答時間の小さな温度センサを使用すると良いでしょう。
温度が変化する測定対象の場合は、その変化に追従する事ができるセンサが必要となってきますので、応答時間の小さな温度センサを使用すると良いでしょう。
例えば、応答時間の違いは温度センサの太さによってもあらわれます。下表にシース熱電対のシース外径による応答時間の違いを示します。


シース熱電対の応答の一例(弊社試験データーより)
(接地形、常温→沸騰水中)

シース外径 応答時間(95%応答)
1.0mm 0.2秒
1.6mm 0.6秒
3.2mm 1.8秒
8.0mm 10.7秒

3.挿入長さについて

 接触式温度計による温度測定では、温度センサと測定対象を接触させた時、測定対象の温度が変化しない事が大切です。熱容量の小さい測定対象では、接触による変化が生じやすいため、温度センサの選定や測定方法の工夫が必要となってきます。
温度センサを測定対象に挿入して測定する場合を考えてみます。温度センサの保護管は通常、測定対象と外界の両方共に接した状態で使用されます。測定対象と外界の温度が違った場合、保護管を通して熱の移動が起こります。熱の輸送量は、


   熱輸送量[W]=物体の熱伝導率[W/m℃]/長さ[m]× 伝熱断面積[m2] ×温度差[℃]


で表されるので、金属製の保護管(熱伝導率が良い)で、太く(伝熱断面積)、挿入長が短く(長さ)、測定対象と外界の温度差が大きい(温度差)時には、保護管を通して多くの熱の移動が行われやすくなります。その結果、保護管先端(測温部)の温度は外界の影響を強く受けるようになり、測定誤差を生じやすくなります。
一般的に金属製保護管の場合、直径の15~20倍以上、測定対象に挿入する事が必要とされています。
下図にガス温度の測定例を示します。配管の保温材の有無、配管のセンサ取り付け部の大きさ、温度センサ保護管の挿入長によって、測定誤差が大きく違うことがわかります。この場合、Dの設置方法が最適です。Aの場合、挿入長が短く、保温材で保温されていない部分が大きいため、誤差が大きくでます。BとCを比較した場合、保護管の太さによって誤差の違いがでることがわかります。Eの場合、温度センサの取り付け部分が非常に大きく、保温材も無い事から、誤差が大きく出ています。

参考文献:温度計測100のFAQ  (社)日本電気計測器工業会 発行