技術解説

計測機器における絶縁の必要性について

 弊社の製品のセールスポイントの一つに電源回路が強化絶縁で設計されていることが挙げられます。
では、なぜ絶縁が必要なのか、強化絶縁とその他の絶縁の違いについて触れたいと思います。
絶縁は、通常、以下の目的で使用されます。
  1つは、「機器の破壊」や身体損傷の原因となる「電流サージが生じる事を防止」する。
  もう1つは、相互接続された「異なるグラウンド電位間でのグラウンド・ループの形成を回避する」
ことです。

電流サージの発生を防止するための絶縁は、その防止機能によって次のように分類されます。
機能絶縁 (functional insulation)
 機器のグランドループ形成を回避するためにのみ必要となる絶縁。感電に対する保護については考慮していない。

基礎絶縁 (basic insulation)
 感電に対する基本的な保護を与えるための絶縁。破壊した場合、感電の機器を引き起こす可能性があり、感電するまで破壊しているかどうかわからない場合がある。

補強絶縁 (supplementary insulation)
 基礎絶縁が破壊した場合に、感電に対する保護を与えるため、基礎絶縁に追加して適用される独立した絶縁。 二重絶縁 (double insulation) 基礎絶縁及び補強絶縁の両者から成る絶縁。

強化絶縁 (reinforced insulation)
 二重絶縁によるものと同等以上の感電に対する保護を与える単一の絶縁。

 絶縁は、耐電圧の確保のために必要な距離を置くことによって、あるいは適切な絶縁材を挟むことによって行なわれます。絶縁材としては、シート、絶縁テープなどを使用することが多く、それらの材料は、経時的な劣化、機械的損傷により、絶縁性を保てなくなることがあります。特に基礎絶縁しか施されていない機器は、絶縁の単一故障が感電事故を引き起こす可能性があります。
電気機器の安全規格(JIS C 1010-1,IEC61010-1)では、装置に対してオペレーターが触れる可能性がある二次側については、感電する可能性がある高い電圧と二重絶縁または強化絶縁することを要求しています。従ってキーなどの操作部分を持っている温度調節計などは電源との間には二重絶縁若しくは強化絶縁が必要になり、基礎絶縁のみの計器では計器外部で補助絶縁を施す必要があります。
 そのため、電気機器の設計や製造に際しては、想定される使用期間のあいだに絶縁が損なわれる可能性を充分に低く抑えることが必要となります。

次に、性能面に関して絶縁の必要性を考察します。

 絶縁は、2箇所以上の計測系統を物理的または電気的に隔離するための有効な手段です。電気的絶縁は、2つの電気系統間のグランド経路を隔離することで、各計測系統のグランドループが遮断され、計測上の様々な悪影響を軽減することが可能です。

   

 図1は、2台の計器で少し離れた点の温度を測定する例です。温度センサーはヒーターに埋め込まれる場合が多く、対アース間には必ずと言っていいほどコモンモードノイズが発生します。このとき計器で絶縁がされていない場合の等価回路が図2になります。
 各センサーに発生しているコモンモード電圧に差があると計器を通してGND間に電流が流れ、計器内配線の抵抗成分の影響で測定値のシフトが発生し、正確な計測ができなくなります。
この場合、電流の流れる経路を切断すること(絶縁すること)で、解決できます。

そのほかに絶縁することで以下のことに効果があります。
•電磁リレーや、各種モーターなどより発生するスパイクノイズからの機器の保護
•コモンモードノイズ耐量の強化
•ノイズイミュニティー性の向上
絶縁は、オペレーターの感電防止やより正確な測定の実現に大きな役割を持っています。
特に、温度調節などの非常に繊細な測定が必要なアプリケーションでは必須なものです。

理化工業は、強化絶縁を施すなど安全に安心して使える商品作りに努めています。