技術解説

金属と温度と電気の関係

金属と温度と電気の関係

 金属と温度の関係では、熱膨張の現象が広く知られています。では、金属と温度と電気の関係はどうでしょうか?
小学生の頃に理科の実験でニクロム線に電池で電気を流し熱が出る実験など、金属に電気を流すと熱が出る現象(ジュール熱)については、今さら説明する必要もないでしょう。
ここでは、熱電対の測定原理のヒントになる現象について解説致します。
金属棒の一端を熱した場合、熱していない低温側へ熱伝導が起きる事は、読者の皆様も容易に理解出来るかと存じます。この時、熱以外にも移動しているものがある事は、あまり知られていないかもしれません。高温側から低温側へ金属内の自由電子が移動しているのです。

低温側がマイナス(負極)に帯電し高温側がプラス(陽極)に帯電します。
この様な状態の金属棒に電流を流した際に、電流を流さない時と比べて余分の熱流変化が起こる現象をウィリアム・トムソン(William Thomson)が発見した事からトムソン効果と呼びます。


  低温から高温へ電流を流すと熱流は増加

  高温から低温に電流を流すと熱流は減少


ちなみに温度差が小さい場合は、同一金属でも自由電子の活動は、小さくなります。

これらの自由電子の動きは、同じ温度環境に於いても材質が異なれば変わって来ます。
金属の種類によって、熱膨張率、熱伝導率が異なる様に自由電子の振る舞いも変化するのです。

材質A


材質B
  


金属に温度差があれば、自由電子が動くなら単一の金属のみで温度センサが作れると思われるかもしれません。下図に同一金属を対にした例を示します。

上図を見ると、高温側から低温側へ自由電子が移動しているので電流が流れて居るように思われる方もいるかもしれません。しかし、同一金属では電位差が無いため低温側がマイナス(負極)に、高温側がプラス(陽極)にそれぞれ帯電するのみで電流は流れません。
金属と温度と電気の関係は、まだまだ複雑で奥深いものがありますが、熱電対の測定原理を知る上の序章としてご理解願います。

上記の説明を踏まえて、熱電対の測定原理について考えて見ましょう。
温度差が生じた際、自由電子の移動が小さい材質Aと自由電子の移動が活発な材質Bを用意します。

材質A
材質B

これらを高温側、低温側で接続すると、

電位差が生じ、電流が流れます。この現象をドイツの物理学者、トーマス・ゼーベック(ThomasJohann Seebeck)が発見した事からゼーベック効果と呼ばれています。