技術解説

樹脂圧力センサの基礎

1.樹脂圧力センサの必要性
プラスチックの成形加工の一つに押出成形があります。これは、熱可塑性プラスチックを押出機中で加熱・加圧して流動状態にし、型から連続的に押出して所定の断面形状を持つ長尺成形品を作るものです。(例:パイプ、棒、被覆電線など)
これらの製品に必要な寸法や品質を維持するためには、押出量の割合や一定の溶融条件を保たなければなりません。これらを維持するために重要な測定量の一つとして、樹脂圧力があります。
溶融樹脂の押出量は樹脂圧力に深く関係しています。そのため、押出機のダイやヘッドの位置に樹脂圧力センサを取付け、圧力が一定になるように制御することで、押出量の定量化の役目を果たしています。
また、溶融樹脂内の異物等を除去するスクリーンがありますが、長時間稼働により目詰まりを起こし、押出圧力が上昇することがあります。これにより、成形品の品質劣化や過大圧力による設備損傷をまねく恐れがあるため、上限圧力を監視し、警報を出す目的として樹脂圧力センサを使用することがあります。
このように、樹脂圧力を測定する樹脂圧力センサは、押出成形に欠かせない要素の一つです。

弊社は、樹脂圧力センサとして、CZ-100P/200Pシリーズを製品展開しています。
弊社の樹脂圧力センサはどのように圧力を測定しているかご紹介します。

2.樹脂圧力センサについて
・基本構造
樹脂圧力センサは、受圧部(ダイヤフラム),導圧部(プッシュロッド、導圧管),圧力素子部(起歪体、歪ゲージ)で構成されています。(下図の左側参照)
測定原理は、ダイヤフラムに圧力が加わることにより、ダイヤフラムが変形し、この変形をプッシュロッドが起歪体に伝えます。(下図の右側参照)
起歪体は、変形することにより歪みを生じます。この歪みを、ブリッジ回路を形成した歪みゲージにより電気信号に変換し、圧力変換指示計で圧力を表示します。樹脂圧力センサの構造上の特徴は、プッシュロッドを介して圧力を圧力素子に伝達する構造にあります。プッシュロッドを介することで、受圧部が200℃を超える高温においても圧力を測定できる構造としてあります。(圧力素子部の耐熱は一般的に150~200℃程度のため)

3.圧力測定の原理
弊社の樹脂圧力センサCZ-100P/200Pシリーズは、「歪ゲージ式ホイートストンブリッジ」という方式を用いております。これは、圧力を受ける面が変形し、それに伴いその面に生じた歪を、歪ゲージを用いて検出する方法です。以下で、歪ゲージおよびホイートストンブリッジについて簡単にご説明します。

・金属抵抗体歪ゲージ
金属線に応力を加えると、表面に歪が生じ、そのために抵抗値が変化する現象があります。この現象を利用したのが金属抵抗体歪ゲージです。金属線の抵抗Rは一般に次式で表されます。

(ρ:比抵抗(物質の固有値)[Ω・cm]、L:長さ、A:断面積)

上式から分かるように、同じ物質の場合、長さが長いほど、また断面積が小さいほど抵抗値は大きくなります。このような金属線の軸方向に下図のような引張力が働いた場合、金属線の長さは長くなり、断面積は小さくなります。この時、上式を考えると、抵抗値は元の値より大きくなります。逆もまた然りです。

つまり、金属抵抗体に外力を加えて伸縮させると、それに伴い抵抗値も増減するということです。従って、歪を測定したい物体に密着すれば、外力による伸縮に比例して抵抗体も伸縮し、歪を抵抗値の変化として捉えることができます。
ここで歪について簡単にご説明します。歪とは、金属線のもとの長さに対して、伸縮に伴い微小変化した長さの割合のことで、下式で表すことができます。

単位はストレイン(strain)で表されます。実際には、伸縮に伴う変化量は微小であるため、単位としてはマイクロ・ストレイン(×10^-6 strain)が使われます。

・ホイートストンブリッジ回路
圧力を歪に変換する方法は、上述の歪ゲージを用いますが、実際の抵抗値変化は非常に小さく、歪ゲージ1枚では精度的に良い測定ができません。そこで、小さい抵抗値変化を精度よく測定する方法として4枚の抵抗体を用いたホイートストンブリッジ回路があります。(下図は回路の模式図)

上図のように4枚の歪ゲージから構成され、印可電圧をVinとすると出力電圧Voutは下式で表されます。