技術解説

電波の伝わり方と性質

1.はじめに
皆さんはスマートフォンが何故インターネットに繋がるのか、考えてみたことはありますか?スマートフォンなどは通信機器と呼ばれ、電波で無線通信を行っています。そのため、ケーブルが無くてもインターネットに接続可能で、(電波が届く場所ならば)どこでもコミュニケーションを取ることができます。
電波は様々な用途で使用され、日々研究されています。無線製品や電波の技術に興味があり、これから学んでみたいという方もいると思います。しかし電波は目に見えないため、ハードルの高い分野かもしれません。そこで本記事では、電波のイメージと伝わり方、その性質について解説いたします。

2.電波と電波伝搬
電波とは電磁波の1種であり、電波法で『周波数が300万MHz以下の電磁波』と定義されています。無線通信やレーダーなどの計測、電子レンジなどの加熱機器に利用されています。

図 1.周波数による電磁波の分類 (出典:総務省HP)
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/pr/

電波は波という文字があるように、波の性質を持ちます。同じ波である音波と比較すると、伝わり方に大きな違いがあります。音波は空気などの物質を振動させて相手に伝わりますが、電波は振動させる物質がない真空でも伝わります。なぜ真空でも伝わるのかというと、時間変化する電流が流れることで磁界が発生し、発生した磁界に対し電界が発生し、その電界に対し磁界が・・・と繰り返されるからです。文字だけの説明では理解しにくいので、図2を用いて説明します。

図 2.電波の伝わり方

電流の向きが時間変化することで磁界が発生する『アンペールの右ねじの法則』と、その発生した磁界に対して電界が生じる『ファラデーの電磁誘導の法則』が繰り返されることで伝搬します(図2参照)。

① アンテナに電流が流れると、『アンペールの右ねじの法則』により磁界が発生する
② ①で発生した磁界に対して『ファラデーの電磁誘導の法則』により電界が発生する
③ ②で発生した電界に対して磁界が発生する
④ ②から③を繰り返して伝搬する

このようにイラストで考えてみると、2つの物理現象によりお互いに磁界と電界を発生させていることがわかります。これが電波の発生と伝搬の原理です。

3.電波の性質
電波は波であることから、反射と透過、回折、干渉という基本的な波の性質を持ちます。図3のように身近な例で波の性質を説明します。

図 3 身近な電波の性質

① 反射と透過
反射は電波が通りにくい物質にぶつかると跳ね返る現象で、透過は電波が物質を通り抜ける現象です。外の基地局から電波が出ていて、自分が家の中にいるとします。壁に使われるコンクリートは電波が通りにくい物質で、電波が反射しています。コンクリートに当たった電波の一部や窓に当たった電波は反射せず、家のなかに入ってきます。これが透過です。家の中でもスマートフォンが使用できるのも、透過という性質のためです。反射を利用したモノにはパラボラアンテナがあります。パラボラアンテナは人工衛星と通信しますが、電波を曲面で受け反射させ受信部に集める構造になっています。

② 回折
回折は電波が障害物を回り込んで伝わる現象です。図2のように家の中でスマートフォンを使用するとき、周りには家具や階層の違いなど様々な障害物があります。電波は回折の性質により障害物を回り込んで伝えることができます。

③ 干渉
干渉は複数の電波が合成される現象です。同じ向きの波であれば重なり合うことで強め合い、逆向きの波であれば打ち消します(図4参照)。図2のように電子レンジの電波とWi-Fiの電波は同じ周波数です。そのため電子レンジの電波がWi-Fiの電波と干渉し、通信障害が起こる恐れがあります。またイヤホンやヘッドホンに搭載されているノイズキャンセリング機能は干渉が利用されています。この機能は外から入ってくるノイズに対して、逆向きの音波を発生させ打ち消します。

図 4 電波の干渉

4.おわりに
今回は電波についてイラストで解説しました。電波は見えないため、難しく感じる方が多いかもしれません。しかし、イラストを使用して考えると意外と単純です。私たちが普段使用しているスマートフォンなどの通信機器を例に電波の性質を考えることで、電波や無線通信の理解につながってくると思います。この記事を機に、電波や無線通信に興味を持っていただけると幸いです。