技術解説

温度センサの選定方法 シース熱電対の特徴とは?

1.一般形熱電対とシース熱電対の違いについて

 温度制御を行う際、温度センサの選定が重要になります。一般的によく使われる熱電対温度センサには、一般形熱電対とシース熱電対があります。それぞれの構造として、一般形熱電対は絶縁用がいしで素線を被覆していますが、シース熱電対は酸化マグネシウムを充填封入しています。この構造の違いにより、シース熱電対は一般形熱電対よりも耐衝撃性と応答性に優れています。本稿では、シース熱電対はなぜこのような優れた特徴があるのか、その理由について説明します。 

2.耐衝撃性

 図1には、弊社の一般形熱電対とシース熱電対の先端部(測温部)の断面構造を示しています。一般形熱電対は素線を絶縁用がいしで被覆しています。絶縁用がいしはセラミック製のチューブ(図2)のため、曲げや衝撃によって、割れてしまうことがあります。絶縁用がいしが割れると、素線同士や素線と金属管が接触してしまい、測定誤差や断線の原因となります。一方、シース熱電対は粉末状の酸化マグネシウムを充填封入しているため、柔軟性があり、曲げや衝撃にも耐えられます。そのため、素線をより効果的に保護することができます。以上のような構造の違いがあるため、シース熱電対は一般形熱電対よりも耐衝撃性に優れています。

図1 一般形熱電対とシース熱電対の先端部(測温部)の断面構造
図2 絶縁用がいし

3.応答性

 応答性とは、温度センサが測定点の温度変化に追従する速さのことです。応答性が良いということは、温度センサ自体の温度が変化しやすいことを意味します。ここでは、温度変化のしやすさを決めるセンサの外径や素線径、構造等について説明します。

3.1 センサの外径と素線径

 物質の温度は体積が小さい方が変化しやすくなります。そのため、センサの外径は小さく、素線径は細い方が応答性は向上します。まず、センサの外径をシース熱電対と一般形熱電対で比較します。一般形熱電対は図1に示すように、絶縁用がいし(図2)を挿入します。このため、絶縁用がいしが挿入可能な外径の大きい金属管を使用する必要があります。対して、シース熱電対は粉末状の酸化マグネシウムを充填封入しているため、外径を小さくすることができます。

 次に、シース熱電対と一般形熱電対の素線径を比較します。素線径はJIS規格(JIS C1605 シース熱電対)で表1のように定められており、弊社でも同様の径を採用しています。これより、素線径はシース熱電対の方が細いことがわかります。以上より、シース熱電対の方が外径を小さく、素線径を細くできるため、優れた応答性を実現することができます。

 

 

表1 シース熱電対と一般形熱電対の素線径[mm]

シース熱電対0.075~1.2
一般形熱電対0.32~3.2

3.2 センサの構造

 応答性には、測定対象から測温点のある素線までの熱の伝わりやすさも重要になります。図1には、弊社の一般形熱電対とシース熱電対の断面構造を示しています。一般形熱電対では金属管と絶縁用がいしと素線の間にそれぞれ隙間があります。一方、シース熱電対は隙間なく酸化マグネシウムが充填された構造になっています。酸化マグネシウムと空気の熱伝導率(熱の伝わりやすさ)はそれぞれ表2のようになっており、 隙間のような空気層は素線に熱が伝わりづらくなる要因になります。このため、シース熱電対の方が素線に熱が伝わりやすい構造となっています。

 

 

表2 酸化マグネシウムと空気の熱伝導率[W/(m・℃)]

酸化マグネシウム(マグネシア)48.4
空気0.026

4. 最後に

 以上のように、シース熱電対は一般形熱電対に比べて、耐衝撃性と応答性に優れた温度センサになります。使用時には注意点もありますので、温度センサの取扱上の注意点を参考にしてください。弊社では様々なシース熱電対を取り揃えており、カスタム対応も行っています。温度制御に関するご相談やご要望がございましたら、ぜひ弊社のウェブサイトやお電話などでお問い合わせください。

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