技術解説
電力と力率
1.はじめに
電力[W]は、電圧[V]と電流[A]の積で表すことができます。
電力[W] = 電圧[V] × 電流[A]
直流電源の場合はこの式で表せますが、交流電源の場合は、電圧と電流の位相差(θ)と、電力を消費する割合を示す力率などについて考慮する必要があります。
今回は、交流電力と基本波のみの力率について解説していきます。
(厳密には、高調波についても考慮する必要があります)
※基本波:商用電源の周波数をもつ正弦波 (東日本:50Hz、西日本:60Hz)
高調波:基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波
2.交流電力と力率について
交流電力には、皮相電力、有効電力、無効電力があり、それぞれ下記のように定義されています。
皮相電力S:電源から送り出される電力[VA (ボルトアンペア)]
有効電力P:負荷で消費される電力[W]
無効電力Q:負荷と電源間を往復するだけで消費されない電力[var(バール)]
皮相電力、有効電力、無効電力を数式で表すと次式のようになります。
(θ:電圧と電流の位相差)
皮相電力S [VA] = 電圧 × 電流
有効電力P [W] = 電圧 × 電流 × cosθ
無効電力Q [var] = 電圧 × 電流 × sinθ
これらは下図のような関係があります。
図1:皮相電力、有効電力、無効電力の関係図
ここで、力率は下記のように定義することができ、0~1の範囲をとります。
・皮相電力Sの大きさに対する有効電力Pの大きさの割合
・図1の皮相電力と有効電力のなす角θの余弦(cosθ)
力率 = cosθ = 有効電力 / 皮相電力
この皮相電力と有効電力のなす角θが、電圧と電流の位相差となり、θは負荷によって決まります。
※電力の制御方式によってもθは変化します(例えば、位相制御)
電力制御方式:https://www.rkcinst.co.jp/technical_commentary/14374/
ここでは、簡単のため電力の制御方式がゼロクロス制御の場合について説明します。
負荷が抵抗の場合は、電圧と電流に位相差はないため、力率は1となります。
※制御方式が位相制御の場合には、負荷が抵抗であっても力率は1となりません
(抵抗負荷:白熱電球、ニクロム線ヒータなど)
図2の電力の平均値が有効電力となります。
図2:抵抗負荷(電圧・電流・電力の波形)
負荷が誘導性成分を含む場合は、電圧に対して電流が遅れることで、力率が悪化します。
(誘導性成分を含む負荷:変圧器、モータなど)
図3:誘導性成分を含む負荷(電圧・電流・電力の波形)
抵抗負荷と誘導性成分を含む負荷での電力の平均値を比較すると図4のようになります。
図4:抵抗負荷と誘導性成分を含む負荷の電力の比較
抵抗負荷は力率=1であるため、電力の平均値が皮相電力と同じとなります。
誘導性成分を含む負荷は平均電力が抵抗負荷の平均電力に対して小さくなっています。これは、電圧と電流に位相差があることが影響しています。位相差があることで、電力値が負となる領域があることで、平均電力が小さくなっています。
電力料金は力率によって変わりますので、力率を1に近づけることで電力料金が安くなります。
※詳しくは、電力会社のHPをご確認ください。
弊社電力調整器の製品情報はこちら