技術解説

無線の通信距離に影響する要因を考えてみよう!

1.はじめに

無線製品の中には通信距離を表記しているものがあり、弊社製品のNWSシリーズでは100mをうたっています。仕様書などに記載される通信距離は、周囲に障害物などが無い場合での最大距離のことをいいます。実際に使用する環境では、どのように通信距離は決まるのでしょうか?

無線通信は機器の性能に加えて、障害物や他の無線機器の電波干渉など、様々な要因が組み合わさって通信距離が決まります。今回は、通信距離という性能にどのような要因が影響するのかを明確に把握する方法とメリットについて解説します。

2.通信距離に影響する要因は何?

図1は一般的な無線通信の構成例です。通信距離は、送信器・受信器のアンテナ間の距離のことをいいます。

図1 無線通信の構成例

送信器・受信器にはアンテナが必要となります。アンテナは機器にコネクタで取り付けたり、機器に内蔵されていたり、ケーブルで延長して取り付ける場合があります。

図2 アンテナ取り付け

それでは、通信距離に影響する要因を考えていきましょう。通信距離に影響する要因は、距離を伸ばすものと短くするものがあります。通信距離を伸ばす要因を利得要因といい、短くする要因を損失要因といいます。一般的な無線通信の構成では下記のような要因が考えられます。

・利得要因

送信出力 アンテナに供給する電力
供給できる電力の上限は、電波法で定められている。
※空中線電力と表記される場合もある
アンテナ利得 電波を送信・受信する際の効率
使用するアンテナの種類で最大値が決まる。
受信感度 受信器が受信可能な最小の電力

・損失要因

反射損失 ケーブルとアンテナをコネクタ接続する場合など、接続する両者のインピーダンスに差がある場合、電波が反射しその分が損失となる。
反射する度合いのことを反射係数と呼び、式(1)で求まる。

  
インピーダンスZ0とZLの関係は、下記リンクの図5参照
  リンク: 電波の反射と通信距離への影響
伝送損失 電力がケーブルを伝搬する際に、電力の一部が熱となる損失
ケーブル材料や形状・長さ・周波数などで決まる。
自由空間損失

電波が空間を伝搬する際に、距離の2乗に比例、波長の2乗に反比例する損失。
損失量は式(2)で求まる。

 
  Ps: 送信電力
  Pr: 受信電力
  d : 距離 [m]
  λ : 波長 [m] ( λ = c / f c :光速  f :周波数 )

環境要因 障害物や他の無線機器の電波干渉など、周囲環境の影響を受ける。
環境による影響は下記リンク参照。
  リンク: 電波の伝わり方と性質
  リンク: 電波の反射と通信距離への影響



文章だけで考えても分かりにくいと思います。そこで各要因が、無線通信の構成例(図1参照)のどこに該当するか、図3に示します。

図3 通信距離に影響する要因

図3を見ると、送信器・受信器側にも損失要因が多くあり、コネクタやケーブルにも注意が必要なことが分かります。
図を用いれば切り分けて考えることが出来て、何が通信距離に影響するか明確になります。現場で問題が発生した場合などに活用できます。それでは弊社製品を例に、事例を用いて考え理解を深めましょう。

3.事例で考えてみよう!!

弊社製品のNWS-Mini(送信器)の受信器にはNWS-COMと、COM-KGというものがあります。これは用途によって選択可能なのですが、仕様上でうたっている通信距離は図4のように100mと80mで異なっています。

この通信距離の違いについて理由を考えてみましょう。

図4 NWSシリーズと通信距離

NWS-COM、COM-KGの利得要因・損失要因を、図5に示します。

図5 利得要因と損失要因

図4、図5を見てわかるように、NWS-COMとCOM-KGでは使用しているアンテナが違います。
NWS-COMではアンテナが機器に取り付けられていますが、COM-KGの場合は外付けのアンテナはありません。PCとの接続が簡単に行えるCOM-KGでは、図5のように小型の内蔵アンテナを使用しています。
アンテナはサイズと性能がトレードオフになる側面があります。その結果、NWS-COMとCOM-KGでは主にアンテナ利得の違いにより通信距離に差があります。
アンテナのサイズについては、リンク:無線通信周波数と特徴 を参照ください。
もう一つ、環境要因が影響する事例を紹介します。
例えば、NWS-COMを制御盤に入れてご使用いただく場合、通信が不安定になってしまうことがあります。このような場合、図6のようにアンテナをケーブルで延長し、制御盤外部に出すことで解決できます。

図6 アンテナを延長した場合

このように変更して解決することが出来ましたが、注意するポイントがあります。制御盤にNWS-COMを入れる前、入れた後、アンテナを延長して出した場合の、それぞれの利得要因と損失要因を考えてみましょう。

図7 設置の仕方による各要因の違い

アンテナを制御盤の外に出すことで遮蔽物による影響はなくなりますが、ケーブルの使用により反射損失や伝送損失が新たに影響します。そのため、コネクタがしっかり接続されていることや使用するケーブルの伝送損失に注意してください。

4.さいごに

今回、通信距離という性能が、どのような要因で変わるか具体的な事例を用いて解説しました。無線通信は様々な要因が組み合わさって通信距離が決まります。複雑に感じるかもしれませんが、各要因を切り分けるとシンプルになり考えやすくなります。この考え方は、無線通信システムを新たに導入する際や問題が発生した場合にも役に立ちます。弊社では無線センサ変換器“NWSシリーズ”のデモ機貸し出しや打合せなども行っています。ぜひ一度、お問合せください。

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